紅〜kurenai〜





つか、今何時だ?



重たい身体を起こし部屋にかかっている時計を見ればまだ2時だ。



あれから2時間も寝てたのか。



2時間前、幹部室に入ったら何故か肝心のここの幹部達は居らず最も居て欲しくない女しか居なかった。


終いには仁人が愛用している毛布まで持ってるし。



この体調でこれ以上あいつと同じ空間にいると何するかわかんねえと判断した俺は、何か作るよと言った女の言葉をバッサリ切り捨てここへ戻ってきた。



あの女にのめり込んでいる仁人とアイ。

見えない壁を作っておきながらもあの女を彼処に通すことを認めている寛人と辰と、それから悠麻。



何で認めるんだよって感情もある。


何で俺の女嫌いのことを考えてくれねえんだよって感情もある。


俺だけ置いてけぼりくらった喪失感って感情もある。


そして最終的にいつまで経っても乗り越えることができない自分に腹が立つ。



そんな感情全てを忘れ去るようにベッドにダイブしたらその後の記憶がないからそのまま寝てたみたいだ。



とりあえず、仁人達が帰ってくるまでこの部屋で過ごそう。


暇だしもう一眠りするか。


そう決心した時だった。




「……は?」




ドアの所に黒い塊が見えたのは。


明らかに人の形をしているその塊。


ここに上がれるのは、この部屋がある所、つまり二階に上がれるのは限られた人だけ。



幹部はもちろんだけど、あとは総長の仁人が認めた人以外は上がれない。


緊急時以外は獅子の一員であっても。




けれど今現在、1人いる。



獅子の一員でもなくて幹部でもなくてハッキリ言えば部外者の奴。


裏を返せば、仁人が唯一認めた奴。





そう、あの女。




「何でここにいんだよ」



自分でもあり得ないくらいの低く冷たい声が出たのがわかった。

最早女に対して向けるような声色でもないのもわかってる。



けれど同じ空間にいるって事が俺には耐えらんねぇ。





















–––––この時。




自分の声が女に対して向ける声色でないと感じているとこからして少しはこの女を受け入れてしまっている自分がいる事に俺はまだ気づいていなかった。



女に向ける絶対零度の瞳でこの女を…サクラを見ていなかった事に俺は気づいていなかった。