「季節外れの風邪引いてるみたい」
呆れながら慶太にそう言えば
「ああ、今、7月か…」
小さく呟いた慶太の声はしっかりと私の耳にも届いていて。
口振りからして毎年恒例な感じもするけど、あれ?と思った時には既にいつもの慶太に戻っていて
「左側の真ん中の部屋だよ」
そう、私に教えてくれた。
それにありがとうとだけ伝え踵を返し再び幹部室の扉を開ける。
–––––––一瞬、哀しみで染まった慶太の顔には気づかないフリをして。
キッチンに戻って炊飯器を見ればすっかり炊き上がっていた。
炊飯器のお米を取り出して2年ぶりに作ることとなるお粥製作に取り掛かる。
数分後、出来上がったお粥を私の家にある食器とは真逆のある程度年記の入った底の深いお皿に移し替える。
「確か、スポーツドリンクと冷えピタあったよね」
またも私の家にある冷蔵庫とは正反対の中身が豊富な冷蔵庫をさっき覗いた時にそれらが揃っているとこが頭の片隅に残っていた。
案の定、何でもあるんじゃないか?と思うほど揃えが良いその中に探していたものを見つけた。
それを取り出し完成したお粥をと一緒に女嫌いの男の部屋へと向かう。
––––––コンコン
一応、部屋のドアをノックしてみたけど中から返事は返ってこない。
私だから返事をしないのか、それとも…
–––ガチャリ
「…寝てるのか」
部屋にあるベッドの上で蒼麻はぐっすり寝ていた。
それにしても、ここも随分と広いね。
蒼麻から目を離し部屋を見渡して思った。
お金かけすぎでしょたかが倉庫に。
けれど彼処もこんな感じだったから何とも言えない。
とりあえず持ってきたお粥とスポーツドリンク類を部屋にあったテーブルに置いといた。
起きたら食べるでしょ。
仕事を終え、幹部室へと戻ろうと蒼麻の部屋のドアを開けた時、微かに聞こえた。
「––––––………かぁ…さん」
蒼麻の苦しそうな泣き声が。
