紅〜kurenai〜



「チッ…」


私から思うような答えが返ってこず感情をそのまま露わにする蒼麻に、相当嫌われてるなこれ、と苦笑する。


まあ別に私が蒼麻に嫌われていようがいまいがどうでもいいんだけど、蒼麻が女という生き物を嫌う直接の理由に関わっていない私からしたら良い気分ではない。



それに、あんただって仁人達みたいに思ったことあるでしょ?



”見た目で、外見で自分を判断するな”って。



そう一度でも思ったことがあるなら、あんたのその態度は何?って聞きたくなる。
自分のこと棚に上げといて他の人にあれこれ言える立場なのか。


って思うけど、言ったところで蒼麻の女嫌いが治るわけでもないし、それで治るなら仁人達は苦労はしないだろう。




だから気にしないのが1番。

他の女と一緒の括りで見ないでほしいとか思ってない上に蒼麻に女嫌いを克服してほしいとかそんなお人好しの考えさえも持ち合わせていないから。



正直、あの人達から大事な存在として認識されているなら仁人達からどう思われたってどうでも良いんだ。




「お粥とうどんどっちが良い?」




お人好しの考えは持ち合わせていないけど、義理の人情ってやつは世の中上手くやっていくため一応持っている。


って言っても彼に頼まれていなかったら
嫌われている人物に対してご飯を作ってあげるなんてことしたくもないけどね。



手に持っていた仁人の毛布を綺麗に畳んでからソファーに置いて未だドアの所から動かない蒼麻に尋ねながら台所へと向かう。




お米とうどんがなかったらどうしようと一瞬頭をよぎったが、こんだけ生活用品が充実しているのに冷蔵庫の中身が充実してないってことは無いと思い冷蔵庫を開ければしっかりとうどんが入っていたので一安心した。

冷蔵庫の横にはお米が入った袋もある。



うん、これでお粥も作れる、大丈夫だ。



それ以前に女嫌いの蒼麻が私の作るものを食べるかどうかだけど。



「いらねえ」



案の定、って感じだ。


再びこの部屋を出て行った蒼麻。



1人残された部屋にドアが閉まる音が虚しく響いた。