紅〜kurenai〜




《サクラ side》




幹部室に入れば先ほどまで居た下の蒸し暑い空気とは異なる冷たい空気が私に纏わりついた。



肌の毛穴から湧き出る汗を直接刺激して冷やしてくれるその空気はとても心地良い。



慶太達は毎日あの蒸し暑い空間にいると思うとこっちが気が滅入りそうだった。



よく、熱中症にならないね…。






「なんか飲むか?」




ど真ん中にあるソファーに一目散に腰掛けたのは私と仁人で、アイはそのまま台所まで行くと冷蔵庫の中を覗いていた。



お茶出しはいつもお兄さん的存在の寛人がやってくれているけどそのお兄さんが今日は不在のためアイがやってくれるみたい。



まあ本人はそんな良心でやっているんじゃなくてただ自分が飲み物を飲みたいからそのついでにって感じなんだと思うけど。





「お茶」


「水」




そんなアイにただ短くお茶と答える私と、水と答える仁人。




「お前ら…やってやってんだからちょっとは敬意ってものを払え」



「気が向いたら」


と、私。



「…今更だろ」


と、仁人。




「…うぜぇ」と台所から聞こえてきたアイの声は聞かなかった事にする。




まあ、アイがそう言いたくなるのもわからなくもない。



やってもらってる事に有り難さを感じるどころか、仁人はいつもと同じソファーに腰を下ろし雑誌を読んでいて一切顔を上げずに答えた。
そして私もその隣のソファーに寝転んだままダルそうに返事したのだから。



私だったらそんな奴らのためにお茶を出すだなんてこと絶対にしないだろうな。








「ほらよ」



程なくして注文通りの冷たいお茶が運ばれてきた。



仁人が注文した水はわざわざミネラルウォーターに入っているものをコップに移すなんて面倒なことをせずに、冷蔵庫から取り出した500mlのペットボトルを取り出してそれを仁人に投げつけていた。




何の合図もなくアイが投げつけたペットボトルを雑誌を読みながらもパシッと右手でキャッチした仁人の身体能力の高さは異常だ。





私にお茶を渡し終えたアイは自分もお茶を飲みながらソファーに腰掛けどこから取り出してきたのか謎のA4判の紙を難しい顔して眺めている。






仁人も相変わらず雑誌に夢中だし、やはりやる事がない。



いつも騒がしい悠麻がいないその環境はとても静かで程よい涼しさが眠気を誘う。



今日起きたの早かったからな…。



ウトウトしながらそんなことを考えていたとき突然鳴った携帯の着信音に身体がピクリとした。




今日はやけに着信音を聞く機会が多いな。