「慶太?」
「あ?…ああ、悪い」
「何かあったのか?」
「いや、サクラちゃんが此処で挨拶した時のこと思い出してた」
突然、名前を呼ばれ追想の世界から帰ってきたら心配そうな顔をして隣に立っていた朝日がいた。
だから苦笑してそう答えれば、朝日も苦笑気味に「ああ…」とだけ答えた。
多分俺の考えてることがわかったんだろうな。
んでもってその考えを自分も持っていたと。
あの日、仁さん達もサクラちゃん本人も”仁さん達が認めた女”として認識するなと言ったけど
今までこの倉庫に女っていう生き物を一切近づけることをしなかった人達がいきなり女を連れてきただけでも驚くのに、女に対し絶対零度の瞳を向ける彼らなのにサクラちゃんに対してはあり得ないほどの優しい瞳で、下手したら俺らと接する時よりも優しい瞳で見つめていた事に俺らの中に衝撃が走ったんだ。
そこまでさせる女性を、いくら仁さん達が認められた女として見るなと言ってもやはり無理があった。
全員、頭の片隅には”総長が認めた女に”という認識を持っていたんだ。
もちろん俺も朝日も。
サクラちゃんにはなるべく普通に接したつもりだったんだけど、たった今、そんな事を思ってる事をズバリと当てられた。
もう、苦笑するしかないだろ。
「どう思う?」
主語がない朝日の言葉は他の人なら趣旨が掴めず「何が?」と聞き返すかもしれない。
けどカップルかってほどずっと一緒にいた俺には朝日の言いたいことがわかる。
それに朝日が心に抱く葛藤も。
「あの子は俺らが仁さん達よりも先に守るべき存在だ」
「…」
別に、朝日がまだ認められねえっつーなら無理に認める必要はない。
無理に認めたってどうせサクラちゃんにバレるだけだ。
あの人は幹部の人達並みに鋭い洞察力を持ってる。
もしかしたら、その上を行くかもな…。
朝日がサクラちゃんを認められない理由は数分前の俺と同じ理由だ。
あの、冷めた瞳。
その目で見つめられるたび取り憑かれたように身体が動かなくなる。
喜怒哀楽の感情が現れないそれは今はただ落ち着いてるだけでいつか仁さん達を傷つける凶器に変わってしまうんじゃないか。
所謂、仁さん信者だからこそそれを恐れ、また認めなきゃという使命感にも駆られる。
けど確かに俺は感じたんだ。
「サクラちゃんは、心が温かい」
目、は冷たいかもしれないけど、あの人の心は驚くほど優しくて温かい。
