紅〜kurenai〜




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「…さん!…村さん!」


『さくら…』


私を呼んでいるのは誰…?


「霜村さん!!!!」


「ん…。」


私が求めていた声とは違くて、代わりに耳に入ってきた声は初めて聞く声。

瞑っていた目を開ければ私の前にこの学校では珍しい真面目そうな女の子2人が立っていた。


「もう、お昼だよ」


そう言われて周りを見ればお弁当を広げてる人や購買で買ってきたパンを食べてる人が目に入る。



……あれからずっと寝てたのか。


自分の睡眠時間に感心しながらも「最近全然寝てないからな」と心の中で言い訳してからまた目線を目の前の2人に戻す。



「で、何?」

「あ、えっと…」


教室のど真ん中を陣取ってご飯食べたり化粧直してたりギャーギャー煩い低脳な女子たちに比べたら何十倍も真面目で気を遣えて優しそうな彼女たちが言いたいことは大体理解できる。


それなのに冷めた声で聞く私。
そんな私に少し戸惑う2人。


「な、何でもないよ」

笑顔を引きつらせながら去っていく背中を見て悪い事したなとは思うけど、誰とも馴れ合うつもりがない私からしたら彼女たちの優しさは残酷なものでしかなかった。



2人が去った後、幾つかの視線を感じ居心地が悪くなった私は教室を後にした。