目の前で落ち込み続ける朝日と苦笑いの慶太。
「別にいいじゃん似合ってんだから」
オレンジの方が似合うとは思ったけどピンクが似合わないと言ってるわけではない。
それにそろそろウザったい。
「ホントか?!」
私の言葉にピクリと反応した朝日はあり得ないほどの回復を見せた。
「似合ってる?これ似合ってる?」としつこく聞いてくる朝日を殴りたい衝動に駆られる。
「ウザい、限りなくウザい」
似合ってると言われたことがそんなに嬉しかったのか、バッサリ切り捨てた私の言葉にもダメージを受けずニコニコしている朝日の性格はよくわからない。
そんな私と朝日と慶太の様子を周りで見ていた人達が続々と私のところに集まってきて、慶太達と同じように自己紹介をしてはよろしくと握手を求めてきた。
よくわからなかったけど隣にいた慶太に「よろしくしてやって」と耳打ちされたため何故かこの場にいた全員とよろしくする羽目になった。
「何やってんだ?」
「もう人気者か」
全員とよろしくし終えたところでちょうどタイミングよく私達の後ろから声が聞こえた。
それと同時に私以外の周りにいたみんながその場で頭を下げ倉庫が揺れるほどの声で挨拶をする。
咄嗟に耳を塞ぎ「…るさ」と呟いた私の声は彼らの挨拶の声によって掻き消されてしまった。
「上にいなかったのか?」
こちらに向かって歩きながら問いかけてくるのは、此処を背負って立つ総長の仁人。
その横には、総長の右腕と称される副長のアイ。
私を見つめる2人の目が何処となく嬉しそうで、その理由がなんとなくわかる私は居心地が悪くなった。
「暇なら下の奴らに遊んでもらえと言ったのは何処の誰よ」
「…フッ。楽しかったか?」
「さあ?どうだろうね」
そう言った私の答えをどう解釈したのか慶太達に「良かったなお前ら。楽しかったってよ」と伝えてるアイは何なの。
「行くぞ」
私の腕を取り多少強引に引っ張りながら上にある幹部室へと足を進める仁人。
当然の如く半強制的に歩かされた私の後ろをアイが付いてくる。
「サクラちゃんまたね」
引き摺られている私を可哀想な目で見つめてる慶太が私に手を振った。
それと同じようし朝日も周りにいたみんなもそれぞれ「バイバイ」「またな」「行ってらっしゃい」と手を振ってくれた。
「ちょっと待って」
一つ、思い出して足を止めた私につられるように仁人も足を止めてくれた。
右腕に纏わりついている仁人の手を解いて慶太達がいる方へ向かう。
「サクラ?」
後ろでアイの心配そうな声が聞こえた。
声には出さないけれども仁人の心配してる視線が背中にビシバシ伝わってくる。
「サクラちゃん?どうし–––––」
「さっき、敬語なしって言ったのに使ったよね?」
「えっ?」
近づいてきた私に声をかけた慶太の声を遮り、そう問えば一瞬キョトンとした顔をしたが私の言いたいことがわかったのかみるみるうちに頬の筋肉がピクピクし始めた。
「罰ゲーム、次会う時には考えとくから楽しみにしてて」
笑顔でそれだけ言うと仁人とアイが待つところまで一直線に歩いた。
「……鬼!!」
幹部室へと向かって歩き出した私の背中に届いたのは慶太の悲鳴。
ええ、何とでも。
「お前何言ったんだよ?」
呆れたように聞いてくるアイに「秘密」とだけ答えてクツリと笑った私は罰ゲームを何にするかを早速考えていた。
そんな私を穏やかな目で仁人が見てたことも知らずに。
