紅〜kurenai〜




私が言いたいことはきっと伝わってる。



でも、仁人達が細心の注意を払い扱ってる私とタメ口で話していいのか。




今目の前にある複数の顔はそんな感じの顔だ。





はぁー。


そっちが譲れないように私もこれは譲れないからな。


……最終手段といきますか。




「敬語なくしてくれないと仁人に言いつけるよ?」



「…っ」




汚い手ではあるけどこれが1番効く。



どちらも一歩も引かない状態が続く中、やはり先に折れたのは向こうだった。



うん、効果抜群。





「はぁ〜、わかりましたよ」




呆れてるのか苦笑してるのか、両方だな。

緑君だけじゃなくてみんなそんな感じの顔だ。






「敬語使うたびに罰ゲームね」



弾んだ声で言う私を見て「この人鬼だ」とその場にいた皆が心の中で思ったのは言うまでも無い。





















「さ、サクラちゃん。俺らからも一ついい…?」




頑張って敬語を使わないようにしている為か何処かぎこちないそれに思わず笑いそうになったのを堪え「何?」と答えた。




「此処を…獅子を自分のモノにしたいと思わないんですか?」




一旦目を閉じ深呼吸して気が抜けたのか再び敬語に戻った緑君。



けど、今はそれじゃ無い。




獅子を私のモノにしたいかどうかだ。






















「正直言うと、私の思い通りにならないからムカつくしイライラする」




「…っ、やっぱり–––––」




「私に関わるなって言ってるのに待ち伏せはするし」


「…は?」


「必要以上に絡んでくるし?」


「…は、はぁ」


「しまいには誘拐までされて此処に連れてこられるし」


「……」




ほんと散々。



その度にイライラしてタバコの消費量が増えたんだから。


どうしてくれんのよ!


なんて言ったところでどうにもならないけど。






「此処は仁人が創り上げたモノでしょ。貴方達の大切な場所でしょう?

喧嘩しか取り柄が無い人達が集う所だけどそれでも大事な居場所だから必死に守ってるんでしょ」




誰も喋らないその沈黙は無言の肯定とでも言うのか。




仁人達が与えてくれた温かい場所だから、私なんかに土足で踏み込んで欲しいくないんだろう。




けど、一応私だって人間の情ってモノを持ち合わせている。




「そんな素敵な場所を乗っ取ろうと思うほど私はバカじゃないわよ」







わかるから、その気持ち。





フッと零れた笑みは自嘲的なモノなのか、ただ温かいと思ったからなのか。




自分の全てを曝け出せることが出来て、心から笑える場所。


世間から見たらはみ出し者と見なされ見放されてきたけど、喧嘩でしか大事な物を守れないからこそ、自分の居場所である温かいところが何よりも大切で。





そこを守るためなら何だってする。





彼等の目がそう言ってるんだ。






そして、そこを護る為なら本当に何だって出来ちゃうんだ。






––––––––私みたいに。