「今日、転校してきた子だ」


高校1年の7月上旬。
夏休み直前に控えてる今日この頃のとても中途半端な時期に転入だなんて滅多にないだろう。

私だってこんな形の転入なんて予想していなかったんだから。


「霜村 サクラ(シモムラ サクラ)です」


クラス全員が黒板の前に立つ私を食い入る様に見てる中、担任に促され挨拶をする。あくまで名前だけだけど。
担任にはもうすこに何かないのかって顔をされるけど、入学から既に3ヶ月も経っていれば女子はある程度仲良い子達で集まってグループ化されているだろう。

そんな中に貼り付けた笑顔で取り入る気なんて更々ない。


男子なんて以ての外。


転入生と聞いて皆が皆、自分好みの可愛い子を期待するのは当たり前だけど実際はこんな外見の転入生になんて興味がないとでも言うようにそれぞれが好きなことをやり始めている。


黒髪の人なんているの?って言うくらい見渡す限りカラフルな頭にジャラジャラと身につけたピアスやアクセサリーにこれでもかってほど着崩した制服が当たり前の男子。
パンツが見えるほど短いスカートに強烈な香水、茶髪金髪、化粧が当たり前な女子。

そんな所謂”不良校”にやってきたのが

”膝下スカートの黒髪おさげに瓶底メガネをかけた地味子”

なんだからそりゃ興味なんてなくなるでしょ。



まぁ、私としてはそっちの方が都合がいいんだけどね。
寧ろそう望んでいたところだ。



「で、私の席はどこですか?」

「…窓際の1番後ろ」


名前以外に何も言わない私に諦めたのかあからさまなため息をつきながら席の場所を指差さした。





席に着いて…いや、席に着く前に場所を言われた時点で気づいていたけど。


周りの前と隣の空席が若干怖いのは何だろう。
すんごい嫌な予感がする。


けどまあ、静かだからいっか。


前ではそのまま担任が数学の授業を進めているけど、正直簡単すぎて受ける気がない。


まあそれもそうか。前の学校はここよりも15程偏差値の高い学校だったんだから。


抜け出して静かな所で寝たいけどこんなだだっ広い校舎内を歩くよりかはここで寝てた方が身の安全だよね。

ここの席も日が当たらなくはないし。


そう思い、さっきもらった真新しい教科書を積み重ね枕代わりにして夢の世界へと旅立った。