「「「こんにちは!」」」
入口のでかい扉を開ければ、毎度毎度お馴染みの耳を劈くような声が聞こえてくる。
何時もは誰かが開けてくれるから耳を塞いで対策は取れているんだけど、今日は自分で開けなきゃいけなかったため耳を塞ぐのか一歩遅かった。
お陰様で、頭がガンガンする。
「あれ?サクラさんだけですか?」
近くにいた子が話しかけてきた。
挨拶した時、『いずれ獅姫になる』と言った仁人の言葉に疑問を感じすかさず突っ込んだ緑色の頭をした子だ。
「うん、電話してるみたい」
「暑い中お疲れ様でした」
仁人を置いて中に入って来たからか、それとも顔に出てたのか。
どちらかわからないけどどうやら緑君には私が暑くて溶けそうだという事が伝わったみたい。
苦笑いされてしまった。
「上って今誰かいるの?」
下にいる人達の人数も今日は比較的少なくて、あれ?と思った。
そもそも朝は色々と忙しい仁人が私の迎えに来るくらいだから、何となく上に人がいない事は想像がつくけど。
「蒼さんがいると思いますけど、きっと寝てます」
案の定か。
私はあんな朝っぱらから起こしといて蒼麻はまだ寝てるだなんていい度胸してんじゃないの。
「さ、サクラさん…?」
起きたとき振りに朝早くから起こされたことに怒りを感じていたら、緑君が顔を引きつらせてしまった。
「上、行かなくていいんですか?」
何時もは素通りするこの場に今日は立ち止まっている私を不思議に思ったみたいだ。
実際、今上に行ってもやること無いから暇を持て余すだけ。
それよりも私はやらなくちゃいけないことがある、この場で。
仁人達がいないうちにやってしまわなきゃ。
「サクラさ–––––」
「さん、はいらない」
黙り込んだ私に慌てたように声をかけてきた緑君の声を遮る。
「さん付けしなくていいし、敬語も使わなくていい」
緑君だけじゃなくてこの場にいるみんなに聞こえる音量で話す。
けど、それに二つ返事で了承してくれるわけもなく渋い顔をするみんな。
「同年代の人もいるのに何で仁人達はさん付けで呼び、敬語を使うの?
ただ単に、縦社会でいう上下関係が成り立ってるから?」
「違––––––」
「尊敬してるから、でしょ?」
暴走族なんて知りえないこんな地味な女にあれこれ言われるのはきっと癪だろう。
けど私もこれは譲れない。
「じゃあ、貴方達は私に尊敬の念を抱いてるの?だから敬語を使うの?」
自分でも声が低く冷たくなっていることがわかる。
「私は幹部でも姫でも無い。最悪言ってしまえば獅子でも無い。ただ、仁人に連れられてきた部外者だ。
だから、私は敬語を使われる存在じゃ無い」
