紅〜kurenai〜





「さあな」



走り出したバイクの音と一緒に聞こえてきた仁人の声は深刻そうなものではないから何かあったってワケではなさそうで一安心。




まあ、もし仮に私の顔が見られたとして敵対してる所から追いかけられても逃げ切れる自信は十分にあるから危険な目に遭う確率は限りなく低い。







「嫌いな食べ物を聞いてきた悠麻の質問に関係してるわけ?」





もう一つ、疑問に思ったことと言えば先程かかってきた悠麻からの嫌いな食べ物についての電話だ。




疑問に思ったという繋がりだけで一応聞いてみただけなんだけど、一瞬ピクリとした仁人の肩。





……もしかして図星だった?






けど、私の見間違えか、どうやら私の声はバイクの騒音と高速で駆け抜けるバイクが風邪を切る音で仁人の耳には届いてなかったみたいだ。














走り出したのはいいが…。


……仁人さん、あんた飛ばしすぎ。




私を後ろに乗せてるって認識してんのか?





多少イラッときたけど、交差点で左折した時にチラッと見えた仁人の横顔が何処か楽しそうだったので何も言わないでおいた。





私が知る限り、きっと久々にバイクに乗ったんだろうから。






口ではいつも憎まれ口を叩いてくるアイでも私を乗せてる時は絶対に安全運転で走行してくれるから家から倉庫まではだいたい30分くらいかかるけど、私を乗せてるのにも関わらずビュンビュン飛ばした仁人のおかげで15分弱で着いた。




普通の女の子だったら振り落とされてたんじなない?




「どーも」



内心呆れながらバイクが止まったのを確認してからメットを取り仁人返す。




乗った時と同様、ピョンっと身軽にバイクの車体から飛び降りたら仁人に見られていたようで再びニタリ笑顔を向けられた。





「先行っとけ」




そう言って降りたバイクに寄りかかったままの仁人。

その右手には赤い仁人の携帯が握られていた。




…電話?




そう思った時には、もう既に何処かにかけているようで今までとは打って変わって総長の顔をした仁人がいた。




あの人がウジャウジャいる倉庫の中を1人で歩くのは気がひけるけどいつ終わるかわからない仁人の電話をこんな暑い中で待つよりかはまだマシだ。




そう判断した私は一刻も早く涼しさを求め倉庫へと足を向けた。







「暑いから上で待っとけ」






歩き出した私の背中に届いた仁人の声。


携帯を耳から離し此方を見ているその目は私を心配してくれているのか。




あの日、私は守られたいと思ってないと言ったけど此処の奴らが私の事を第一に考えてくれているのはわかってる。



特に、幹部のみんなは。






だからなのか、冷たく突き放せないのは。








–––––––––––情に弱いねえ、私。









再び仁人に背を向け歩き出したと同時に自嘲的な笑みが零れた。