『着いた』
本日三度目となる着信音がリビングに響いた。
––––––––9時55分。
時刻から電話の相手が容易に予想がついた。
そして私の耳に届いた声は案の定コンビニに到着したことを知らせる仁人の声だった。
「今から行く」
電話を切り財布と携帯をポッケに突っ込んで玄関へと急ぐ。
いくら仁人達が嫌いだと言えどもこの暑さの中長々と待たせるのは申し訳ない。
家の鍵を閉め財布の中に鍵をしまいエレベーターに乗り込み、一階に下りる。
エントランスを抜けたところで管理人さんに「お早うございます」と挨拶をされるけど、どうしてもここの管理人さんを好きになれない私はいつも会釈だけしてそこを通り抜ける。
コンビニへと繋がる脇道にさしかかれば見えてくるのはコンビニの裏にある廃墟ビルの駐車場。
そこではまだ続いている喧嘩。
……裏で喧嘩しても無駄。
見えないところで喧嘩しても無駄。
此処は……この繁華街はいくら”見えない”場所を探しても無駄だ。
繁華街全てが支配下であるんだから。
奴等の。
繁華街全てが支配されてしまっているんだから。
劇的な急成長を遂げた大きな組織によって。
見つかれば、地獄–––––––––。
”人間”には戻れないのを覚悟した方が良い。
そんな荒れ荒んだ繁華街は今日も悪と汚さを隠し人々に快楽を与えるんだ。
そして、嘘に嘘を重ね隠されるたびに”私”が死んでいく。
ふと見上げた私が今住むマンション。
階が上がれば上がるほど家賃が高くなるこのマンションが、ここら辺で1番高級なマンションであるという事はこの街に住んでいればきっとみんな知っているだろう。
ここからじゃ、私の部屋は見えない。
––––––––––––––最上階
そこが私の籠(いえ)だ。
繁華街は勿論の事、今目の前にある駐車場も仁人が待つコンビニも。
そして、私の住むマンションも。
––––––––––山口財閥の支配下だ。
学校がある敷地と、獅子に支配が及んでいない事が不幸中の幸いだ。
