紅〜kurenai〜









「そろそろ買いに行かなきゃか」




それと、その横に置いてある残り数少ない紅茶のパック。





基本、この家で食事をする事をしない私の朝ごはんはいつも紅茶一杯だ。

それを朝ご飯というもの違う気がするけど、私にとったら朝ごはんだ。





食事をする機会がないんだなら当然の如く冷蔵庫も高価な食器もオーブンもトースターも使う機会なんてない。



使ったことなんてない。




本当にただのお飾りモンだ。







その中に私がずっと愛用してきたコップを置くなんてことは出来なかった。

だから仕方なくカウンターに紅茶パックと仲良く並んで置いてあるんだ。










「ん〜、匡ちゃんには敵わないなあ」




出来上がった紅茶を飲みながらこれまた広々としたリビングにドンと構えるダイニングテーブルの椅子を引いた。




もう何年も自分で淹れているけど、匡ちゃんが淹れてくれる紅茶にはとても敵いそうにない。




勝ちたいなんて思ってはないけどきっと誰も匡ちゃんの腕前には勝てないだろうなと思う。





今日は、ベッドからシャワー浴びるまでの時間がいつもより3倍ほど早かった為に仁人が迎えに来ると言っていた時間である10時まであと1時間半もある。





特にやる事もなくすぐ近くにあったテレビのリモコンの電源ボタンを押した。



それと同時にテレビから流れてくる朝のニュースキャスターの声。





チャンネルをすべて回し終えて気づいた。



「この時間ニュースしかやっていないじゃん」





朝の8時台なんてニュース局の戦争の時間だ。


それか小さい子向けのテレビしかやってない。





……たまにはニュースでも見て世間を知ろうか。





そう思い最後に回したチャンネルでやっているニュースをそのまま見ることにした。




世間の情報はニュースではなくパソコンで入手する派の私は殆どと言って良いほどニュースを見ない。




朝学校行く前は一応テレビは付けているけど、内容は頭には入ってきてない。







『–––––続いてのニュースです。


劇的な成長を遂げ今や篠原財閥に次ぐ大財閥の山口財閥。その最高責任者である–––––––ピッ』






聞き慣れた名前に思わずテレビの電源を切ってしまう。










–––––––––山口財閥





その名を聞いただけで気が狂いそうになるくらいに憎い。







「…劇的な成長を遂げた、ねぇ」




どうだか。






憎むだけで何もできない自分が1番憎い。