「サク–––––––」
「当たり前っす」
「俺ら仁さん信者なんで!」
「この人達は俺らが絶対に守ります」
仁人の声は彼らの威勢の良い声によって阻まれた。
仁人だけじゃ無い。
ここの幹部皆、幸せ者でもあり不幸者でもある。
こんなにも慕って想ってくれる仲間が側にいるんだから。
そんな彼等に今まで気づかなかったのだから。
仲間がいる。
それほど幸せな事はない。
それほど心強いものはない。
それほど暖かいものはない。
それに気づいた時、人は強くなる。
「サクラはこういう奴だ」
再び騒然としていたこの場を沈めたのは副長の顔をして皆の前に悠然と立つアイの声だった。
そんなアイに並ぶように幹部達が前に出て行くのを、それと反対に一歩下がった私はボーッと見つめていた。
「サクラをここに通わせることを勝手に決めたのは俺たちだ。無理にコイツと仲良くしろとは言わねえ。
自分の目で見極めて、自分で判断してほしい。自分がどうしたいのか、コイツは守るべき存在なのかを」
”守るべき存在”
その言葉は私には程遠いものだと思っていた。
もっと言うならば、一生、その肩書きをもらう事はないと思っていた。
私はそっち側の人間じゃなかったから。
こっち側……貴方達と同じ側の人間だったから。
常に”守るべき存在”を背負っていたから。
………けど、そう思っていたのは私だけ。
結局は、彼処でも私は彼奴らに護られていたんだ。
「…ただ、くだらない偏見を持たずに1人の”霜村サクラ”としてみてやってほしい」
そう言って頭を下げた仁人に続くように幹部全員が頭を下げた。
…あの、加賀でさえ。
社会で上司が部下に頭をさげることなんて無いに等しいのと同じ様に、この世界も幹部が下の者に頭を下げる事なんて絶対にない。
総長と副長なんて以ての外だ。
そんな常識を覆す現実が今目の前にある。
