紅〜kurenai〜







「もう何度か見た奴もいるかもしれないが、今日お前らに集まってもらったのは正式に紹介したい奴がいるからだ」






幹部室を出て、複数の部屋に囲まれたプチロビーを抜けたところの左側には下へと通じる階段が設置されていてその右側は下の階一面を見渡せるバルコニーみたいになっている。




そこに仁人を中心に一歩下がって立っている私から見て左に寛人と蒼麻。
右にアイと加賀と悠麻が立っている。







「サクラ、来い」






仁人に呼ばれ数歩歩けば仁人とアイの間に私が入れるほどの空間が出来た。











「コイツが獅子総勢で守る奴だ。いずれ獅姫になる」




仁人達と同じ位置に立つと下には驚くほどの量の人が溢れていた。




「いずれ…?ってどういう事ですか?」




そう言った仁人の言葉にいち早く反応したのはその中でも一番前に立っていた緑色の頭をした子だった。












「ウチの姫さんは自分から姫を願い下げしちゃう変わりもんだからな」



「だから私は姫じゃないって言ってるでしょ」





クククッと笑ってサラッと姫アピールをする隣のアイをキッと睨む。








けど、下にいる人たちはそんな事よりも私が姫を願い下げした事実の方が遥かに衝撃的だったみたいで先ほどまでの静けさが嘘の様にザワザワとし始めた。




「姫を願い下げって事は仁さんの彼女になるのを願い下げって事だよな…?」



「マジかよ…」



「そんな女初めて見た…」



「普通の女なら喉から手が出る程欲しくて仕方ない肩書きなのに…」








……悪かったわね、普通の女じゃなくて。




「フッ」




心の中で悪態をついていたら今度は右隣の俺様総長野郎に笑われた。





「心の声漏れてるぞ」








……チッ。


女とは思えないだろう舌打ちが出てしまった。




「はいはい、静かに。騒ぎたい気持ちもわかるけど、そろそろ姫さんが無駄に媚び売る普通の女に変身しちゃうからもう少し我慢して」




手を叩きながらこの場の興奮を収めようとしてる寛人だけど、突っ込みどころ満載なんだけど。





まず、なんで寛人もサラッと姫アピールをしているのよ。


しかも無駄に媚び売る普通の女に変身って確かにそんな感じの事をさっき言ったかもしれないけど、私はそんなに短気じゃない。





はぁあ、もう本当コイツらといると無駄な体力の消費が激しいから嫌だ。