「無駄な喧嘩はしないし喧嘩するときは武器は使わず素手でやる正統派だから安心してなんて言ってたのは誰よ」
コイツら相手に真面目に答えるなんて馬鹿らしいって思った。
けど、何故か私の言葉で安心させてあげたかった。
放っておけなかった。
あの頃の私に重なった見えたから––––
「喧嘩して怖がられるのを恐れるなら暴走族なんて辞めな。
中途半端な気持ちでパラリラやるだけなら此処を出て行きな。
関東トップか何だか知らないけどあんた達がそんな事を恐れてたら、あんた達を信じて付いてきてくれている子達が可哀想」
気付いたら、饒舌な私がいる。
「暴れたって止めてくれる人がいる。それだけでいいじゃない」
感情をコントロール出来なくたって自分を止めてくれる人がいる。
自分を見失ったら助けてくれる人がいる。
それでいいじゃん。
他に何を望むっていうのよ。
「ただの友情ごっこをやりたいなら。
ただのカッコつけ男を演じたいだけなら。
貴方達は今此処にいないでしょ?」
「フハッ」
真面目に答えてあげたってのに聞いてきた張本人に声を上げて笑われた。
「じ、仁人が、笑ってる…」
「声、…出して笑ってる…」
笑い転げる仁人を心底驚いた顔で食い入るように見ている。
いやいや、暴れ出すって言っても流石に仁人も人間なんだからそりゃ笑うでしょ。
「俺が出会った時から常に無表情の今の仁人だったな」
私の思ったことがわかったのかアイが笑ってる仁人を見て少々驚きながらも教えてくれた。
人間である以上無表情だからって笑わないわけではないけどね。
なんて思ったけど口には出さなかった。
皆んな笑ってる仁人を驚きながらも嬉しそうな顔で見ていたから。
