紅〜kurenai〜




そんな私の気遣いと寛人の必死の努力も虚しく




「元々は寛人だった」





仁人本人が話を元に戻してしまった。





「おい、仁人」


「いずれ話すことになるなら今話しても変わらねえ」





止めようとした加賀を遮りそう言った。



わざわざ珍しく私が気を遣って聞かないであげたのに、それを振り返すっていうなら話は別。



「元々は?」



容赦なく聞くからね。



そして私が1番聞きたいのは、何故寛人からアイに変更したのかだ。





自分から言いだしたのに、何故か居心地悪そうなバツの悪そうな顔をして私から顔を逸らす仁人に首を傾ける。






「暴れ出した仁人を止められるのはアイしかいないんだよ」




そんな仁人を見かねた寛人が助け舟を出した。




「暴れ出した仁人は誰も手をつけられないほどに危険」






普段、冷静沈着で何考えているのかわからない仁人からは感情をコントロール出来ない仁人が想像できない。



仁人に視線を流せば、悲しそうな顔をした。


けど、それは一瞬で、仁人は私と絶対に目を合わせようとしない。




「その仁人を止められることができ、あり得ないほどの広い視野を持ち常に冷静さを失わないアイを副長にしたんだ」







それだったらアイが総長で良くない?って言葉は喉の奥に押し込んだ。




それを聞いたところでアイの返答がわかってしまったから。



強さ優しさカリスマ性全てに長けているのは仁人もアイも一緒。


だけど、きっとアイは言う。




「俺は仁人には勝てない」って。




それをわざわざ本人の口から言わせてまで聞きたいことではない。






















「俺らが……俺が、怖いと思うか?」




今度は私の目を真っ直ぐに見て聞いてくる仁人。




先ほどの悲しげな顔と同じようにその瞳の奥は不安の色が見えた。





”暴走族の彼ら”を怖がってるのかそれとも”暴れる仁人”を怖がるのか。




仁人が聞きたいのは両方。


いや、仁人ではなく皆んなだ。



私に集まる視線が”答えてくれ”と言っている。