紅〜kurenai〜





「暴走族って聞いたことある?」



コクリと頷く。



どうやらこの場は寛人が仕切るらしい。

確かに他の奴らに任せたら話が脱線して結局何も教えてもらえなかったっていうオチが目に見えるから大人しく聞くことにする。




「簡単に結論から言うと俺たちは獅子って言う関東トップの暴走族なんだ。
って言っても、無駄な喧嘩はしないし喧嘩する時は武器は使わず絶対に素手で遣り合う正統派だから安心して」




そう言って優しい笑みを浮かべるけど、その笑みでさえ作り物である。



そんなコイツが1番危険で仕方ない。




「暴走族にはその族を支える中枢部があるんだけど、それが俗に言う幹部なんだ。そしてこの部屋もその幹部専用の部屋。総長に認められた者だけしか此処に足を踏み入れることは出来ない」




初めて此処に来た時から、わかっていた。



此処が中枢部––––––––––



幹部室だって。






「そしてその獅子のトップに立って組織しているのがここにいる6人」



ここまでは私の調べた通りの内容だ。


そしてここからは私が敢えて調べなかった情報。




例えば










「親衛隊の悠麻と蒼麻。特攻隊長の辰。情報参謀の俺」





一人一人の役職とか。



そしてそれを聞かされた時まさかの事実が判明したんだ。




「副長のアイと総長の仁人で獅子は成り立っているんだ」



「…えっ?」







アイが…副長……?


一瞬戸惑ったけどアイに視線を向ければ。




「なんだよ」



若干不機嫌な声で返されてしまう始末。



「いや、アイよりかは寛人の方が副長っぽいから驚いただけ」



「お前もうちょっとオブラートに包むってことしねえのかよ」





そんな顔して見てくるなら言いたいこと言えよ的な顔をしてたから、言いたいことを素直に言ったのに何故か余計不機嫌になってしまった。



けど、不機嫌になったのはアイだけで他の皆んなは顔を引きつらせ気まずそうな顔をしている。



あー、この質問はタブーだったか。




コイツらに気を遣うなんてことは皆無に等しいけどそんな顔をされてしまっては申し訳なさが心に残る。



私たちを包んだギクシャクした空気を破ったのは


「流石サクラちゃん。驚く観点が普通の女の子とは違うね」




明らかに話題を逸らそうとする寛人の声。


”だから面白いんだけど”と続けて寛人の口から放たれた言葉はスルー。



「私が普通じゃないって言いたいの?」


「あれ?褒めたつもりだったんだけどなあ〜」




クスクスと笑う寛人の顔がなんとも憎たらしい。
綺麗な顔してなかったら顔面に1発拳を入れていたかもしれない。





多分ここは聞かないほうが得策。


そう思った私は寛人の出方に乗った。