「匡ちゃん言わなかったっけ?余計な首は突っ込まないって」
けど、そこで黙って答えるほどの私でもない。
そんな私の返しを予想していたのか、口角を軽く上げた匡ちゃん。
「余計な首を突っ込んではない。お前を心配しているだけだ」
ズルい返しに何も言えない私は、目を伏せ、小さく言った。
「……いろいろあったんだよ」
「サクラ––––」
「それだけ?ならもう帰るね」
これ以上ここにいたらダメ。
そう、頭の中で警報が鳴り響いている。
匡ちゃんと皇くんの声を振り切り理事長室から飛び出した。
『な〜るほどね〜』
理事長室から出て直ぐ右にある、この学校を支えている幾つかの柱の一つの死角になる場所でそんな声が上がったとも知らずに。
–––––––––ギギギィ
重たい扉を押し開けやって来たのは夏の季節にしては心なしか涼しい風が吹き抜ける屋上。
この街が一望できるフェンス越しまで行き背中を預ける。
制服の内ポケットの中に忍ばせている四角い箱を取り出し、その中から1本引き抜いてい火をつける。
私の吐く息に合わせて空に昇っていく煙に懐かしさを感じる。
外見はどこからどう見ても真面目だけど中身はそうそう変われるわけない。
こんなところ仁人たちに見られたら一貫の終わりだろうけど。
久し振りのタバコを吸いながら考えてしまうのはヤッパリさっきの事。
「話したほうが楽になる」きっとそう言うんでしょ?
匡ちゃんも皇くんも彼奴らも。
「1人で背負うな」絶対そう言うんでしょ?
貴方は。
話せたら、どんなに楽だろうか。
吐き出すことが出来たら、どんなに楽だろうか。
”離れたくない”そう言えたら、どんなに楽だろうか。幸せだろうか。
「……巻き込むくらいなら、何も知らない方がいい」
大切な人たちに傷を負わせて手に入った幸せなんて、イラナイ。
大切な人たちを巻き込んで危険な目にあわせるくらいなら私が犠牲になったほうがまだマシだ。
何も言わないよりも”助けて”と口にしたほうが相手の為になるって事は私も十分に分かっている。
既に経験済みだから。
けど、何よりも大切で何よりもかけがえのないモノだから。
傷を負って一緒に守るんじゃなくて、私の手で護りたいんだ。
それに私が全てを晒け出し弱音を吐ける人はただ1人。
たった1人しかいないから。
