「向こうで何があったんですか?」
匡ちゃんと変わってそう真剣な口調で話すのは皇くん。
けど、何も答えられない。
答えることなんて出来ない。
そんな私に今度は匡ちゃんが口を開く。
「前の学校退学になったのはバレだからか?」
そういや、何も伝えてなかったね、そこらへんの事情。
前の学校を退学した経緯とここに来た経緯。
まあ、言えるわけないんだけど、それだけは言ってもいいかな。
「うん、バレた。何もかも全て」
自嘲気味に笑う私の微かな笑い声がやけに理事長室に響いた。
「だからこんな遠くまで来たんですか?」
そんな私を泣きそうな顔で見つめてくる皇くんに、胸が痛む。
「うん」
半分嘘で半分本当の事しか教えることができないから。
「出来る限り俺らもお前の情報を迂闊に漏らさないよう細心の注意を払う」
匡ちゃんの目はいつになく真剣で、私の素性がもう既に誰かにバレているんじゃないのかって思ってしまう。
「ただ、”お前の名”はコッチにも十二分に広まっている。それと同様に噂も」
そのくらい、痛いほど自分が1番わかってる。
「唯一の救いは、今回やらかした事件がまだコッチに広まっていな–––––」
「表に出ることはないよ。全てを揉み消されたから」
「揉み消されたって…誰にですか?」
あー、余計なこと口走ったな。
だから嫌なんだよこういう雰囲気は。
こういう真剣な目とオーラは。
自分を守ってくれる人がいるって思ってしまうから。
まだ、自分を信じてくれる人がいるって勘違いしてしまいそうになるから。
「さあ?誰だろーね」
そういう私の声は酷く掠れていた。
「サクラ」
静寂に包まれた理事長室に匡ちゃんの鋭く低い声が響く。
目線を下げて匡ちゃんと目を合わせないでいる私だけど、一向に口を開かない匡ちゃんの意図が読めてしまった。
「なに」
返事したのに返ってこない言葉にああ、やっぱりと確信した。
「何があった?」
結局、負けて目を合わせてしまう自分が嫌になる。
