「よ!」



朝からそう私のマンションの前で挨拶するのは、誰がどう見ても完璧な男のアイ。



何でいるのとかまたいるのとか言う気も失せてくる。



アイを一瞥した後そのままスルーして横を通り過ぎた私に何も言わず着いてくるアイはそろそろペット化しそうな勢い。




なんか、もっとこう、硬派なイメージ持ってた。

こんなフレンドリーな性格じゃなくてどちらかと言えば仁人よりの硬い性格かと思ってたけどどうやら違ってたみたい。


人は見かけによらないってこういうことか。




「今日が最後だな」


私の後ろを歩いているアイがボソリと独り言のように呟いた。


「もし、俺らが賭けに勝ったらどうすんの?」


そんな事ないとは思うけど、何があるかわからないからな。90%の勝率があると言っても残りの10%に入ってしまうかもしれないし、もしくはひっくり返されてしまうかもしれないし。



「通う、だろうね」



それに約束は約束だ。

自分から言いだした条件をクリアしたのに行かないだなんてそこまで糞な人間ではない。



貴方達が、心底嫌いなのには変わりないけど。



「やっぱ、お前面白えな」



チラリと後ろを振り返って見たアイの顔は至極嬉しそうな顔で笑っていて何で返して良いのかわからなくて困った。


まあ、いつも通りこれもスルーでいっか。


そう思って一瞥しただけでそのまま前を向いて歩き始めた時



「先、行けよ」



止まった場所から動かずにそう言うアイ。

けど、学校まではもう少しある。



なんでアイがそんな事言うのかもわからなかったし立ち止まっている意味もわからなかった。




「巻き込まれたくねえんだろ?」




この言葉を聞くまでは。




昨日と同じようにアイと学校まで行ったらさすがに女子たちが黙ってないと思う。

その後の呼び出しと血祭りは決定と言っても過言ではない。


それを私が嫌だと昨日言ったからなんでしょ?


まだ学校は先にあるっていうのに私を先に行かせようとしてくれてるのは。