「お〜、よくやってるなあ」



足を進めること数分。


辿り着いた場所は、先ほど自分が立っていた状況と同じような絵面。



20対1と先ほどより相手の人数は少ないが。



「へぇ〜やるじゃん」



20人相手に引けを取るどころか、的確な急所を狙い1発で仕留めている。




ここは、平気か。

ただの喧嘩みてえだし、あの少年がきっと直ぐに終わらすだろう。



そう思い踵を返した時。






「や、やめって、くれ…っ!」


「あ?」


「わるっ…かっ…ウッ」


「聞こえねえよ」




––––バキッ




「アアアッッ!!」




綺麗に鳩尾に入った拳と同時に聞こえたリアルな音と悲痛の声。



ああ、あれ肋2本くらい逝ったな。




同時に気絶した男を未だ殴りつけている少年の眼は、先ほどまで相手を馬鹿にしていた様な眼とは打って変わって、相手を殺しにかかる様な血眼。





結局行かなきゃ行けねえわけか。



どいつもこいつも好きだねぇ、喧嘩。
人を殴って何が楽しいのかさっぱりわかんねえよ。

ただ、拳が痛えだけじゃん。何も残んねえじゃん。







薬中の連中を容赦なく潰しといて何をほざいてんだ?って?




さあ?何でだろうな?



知りたきゃ自分で探せ。


”俺”は無闇矢鱈と相手に自分の情報を売るほど腐ってねえよ。













「死ぬぞ、ソイツ」




何発目になるかわからない拳を振り下ろそうとした腕を寸前で止め、気絶している男を少年から引き離した。






いきなり現れた男に喧嘩を止められた上に腕を取られた少年は手を外そうと力を入れるが、ピクリともしない男の腕に眉を寄せる。




「あんた誰」


「お前に教えるほど俺の名前は安くねえよ」




フッと笑う俺を敵意剥き出しに遠慮なく睨んでくる少年はまだ世を知らない。