紅〜kurenai〜






「……はぁ」



悠麻から上手く逃れたのは良いが、悠麻よりも粘りが強い奴がいたのを忘れてた。



「んな明らさまに嫌な顔するなよ」



ケラケラ笑いながら言うコイツは朝と同様に私が来るのを待っていたようで。



「何の用?」



そして悠麻の時と同様目の前で足を止めることをせず足を進めながら…と思ったんだけど、私も馬鹿じゃないから学習した。



歩きながら話せば必ず後をついてくるって。


だから今度はだいぶ距離をとって止まり要件を聞く。



「送ろうかと思って」



…ああ、デジャヴ。


出来ることならこれが幻聴とかだったら良かったのに。



「結構です」


どいつもこいつも何でこんな地味子に構うのかが謎だ。

私に構ってる暇があるなら美人なボンッキュッボンッを相手にしたほうが何十倍も楽しいのに。


それがわからないなんてコイツら本当に健全な高校生か?


まあ、コイツらが健全だろうとオネエだろうと何だろうと私には興味ないことだけど。



そう思いながら奴の……アイの横を通り過ぎるけど



「何笑ってんのよ」



チラリと一瞬見えたアイは何故かとても愉しそうな笑みを浮かべていて正直引く。



面倒なことにコイツが待っていたのは校門で、全校生徒がここから学校を出て行くのであって、出てくる女子たち皆がアイの笑っている顔に頬を染めキャーキャー騒いでいる。



…尋常じゃないくらい煩い。


こっちとしては良い迷惑だ。

歓声と同時に四方八方から感じる女子からの鋭い視線。



……ああ、明日呼び出し決定だなこれ。

夏休み前の終業式くらい静かに終わらせてよねホント…。





「『こんな地味な自分に構ってる暇あるなら他当たれ。良い迷惑』…どう当たってる?」



周りにいる女子に一切目を向けず未だ口角を上げているアイが見事に私の心の中の心情を読み取った。



顔に出ない方なんだけど、そこまでハッキリ読み取れてるんなら後は自分で考えて欲しいところなんだけどな。



「仮に当たってたとして何か問題でも?」


「はは、やっぱお前面白え」


「あっそ」



全く質問の答えになってないけど今はもうどうでも良い。


面白いと言われるのは、これで2人目。

軽く誘拐されて初めて倉庫に連れて行かれた日に仁人に数回面白いと言われたけど何が面白いのか何処が面白いのか私には到底理解でない。