高校生相手にその殺気を出すのはどうかと思うけどね。
取り敢えずさ。
「先生、授業進めなくていいんですか?」
女子がうるさいからここから離れて欲しい。
タダでさえ悠麻が近くにいるだけで非難されるのにそこにイケメンだと女子生徒の間で人気のある皇くんが加わったら更に面倒な事になる。
「すいません、再開しますね」
苦笑いして戻っていった皇くんに密かにホッと息を吐く、が、クラス全体がホッと息をついた気がするのは私だけか?
「マジ怖ぇ…」
悠麻も例外ではない様だ。
「てかさ、サクラちゃんの藍センどんな関係…?」
まあ確かな悠麻が疑うのも無理ないよね。
下手したら学校一イケメン且つ恐れられている教師がこんなイケメンとは無縁ですという様な地味子に敬語を使って話しているんだから。
立場が逆転してしまってるんだから。
「いやその前に藍センって何者だよ…。あんな殺気そうそう出せねえぞ」
私に皇くんとの関係を聞いときながらやっぱりそっちの方が気になるみたいで、悠麻の口から出た素直な疑問の声はシーンとしてる教室に響いた。
……やっぱバカだこいつ。
さっき皇くんに怒られたばっかなのに再び授業の妨害をしている。
案の定、再度こちらにやってくる皇くん。
の表情は何故か、満更でもない顔。
まさに「よくぞ聞いてくれた」と言いたげな顔とでも言おうか。
……ああ、そういや悠麻程ではないけど、この人もだいぶバカだった。頭ぶっ飛んでるんだった。
「フフフフ。知りてえか?」
私達のところまでやってくるとまたもや仁王立ちで不敵に笑ってる皇くん。
そんな姿に周りの女子がキャアと黄色い歓声を上げる一方で、悪いが私には「なにカッコつけて胸張ってるだこのボケ」としか思えない。
「俺はな、ク–––––––」
「ゴホンッ」
本気で言ってしまいそうな皇くんの声を遮る様に咳払いをして目の前に立っているバカを見上げる。
それ以上言ったらどうなるかわかってるよな?
説教されシバかれるだけじゃ済まないかんね?
……明日も問題なく息していたいんだったらそれ以上は言うんじゃねえぞ?
という殺気を全て目に込めて皇くんを睨み上げる。
「お、れは、只の高校教師だ、うん」
思いっきり顔を引き攣らせながら当たり前のことを言って帰ってった皇くんは日本語が良く分かるみたいで何より。
隣で不思議そうに皇くんを見ている悠麻程バカではないから良かったよ。
まあ、匡ちゃんに報告だけど。
