実際、その人物に驚いたのは俺だけじゃなくて隣にいた蒼麻もパソコンいじってた寛人も驚いていた。
あのいつも無表情の仁人でさえ目を見開いてそいつを……アイを見ていた。
ただ、一瞬、辰だけは悲しそうな苦しそうな顔をしていたのを俺も、仁人も。
誰も気づいていなかった。
アイは驚く俺らを他所にテーブルの上に置きっぱなしだった自分のバイクのキーを掴むと一目散にあの子の後を追った。
「……へぇ〜。」
そんなアイを意味深な笑みを浮かべながら見送ったのは寛人。
まさに、新しい玩具を見つけでどうやって遊ぼうかを考えている子供のような、そんな笑みだ。
喧嘩では当たり前のように仁人が1番強い。誰も敵わないけど、いろんな意味で1番恐いのはコイツだ。
「それにしてもある意味1番女を嫌っている仁人がここに女を連れ込むとはねえ〜」
クスクス笑いながら仁人に向けてる視線は完璧弄っている。
…仁人をこうやってからかって弄れるのも恐れ知らずの寛人だけかもしれない。
「…俺だけじゃねえだろ」
そして、寛人が自分のことをからかっているとわかっている仁人は絶対零度の鋭い目をさらに細くし寛人を睨みながら言う。
もちろん舌打ちも忘れずに。
それを物ともせず「あ〜アイね〜」なんて呑気に緩い口調で言うコイツの図太い神経は最早尊敬の域。
まあ、確かに。
女に一切興味がなかった…いや、女をただの制欲処理の道具だとしか思ってなかったコイツらが1人の女に執着しそうになってるなんてな。
……笑える。
