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バタンと扉が閉まり俺らだけになった空間に今までに感じたことのない何とも言い難い空気が流れた。
「…今、彼奴わかってて–––」
「んなわけねえだろ」
俺の無意識の呟きを遮り、心底嫌そうに顔を歪めながら言う隣の蒼麻の言葉が確かである事を俺も願ってやまない。
そんな思いは
「彼奴はわかってる」
目を閉じたままソファーの上で微動だにしない仁人が口元を歪め低く呟いた声に砕かれた。
正直俺も心の何処かではそれをわかってた。
彼奴は…あの子は違うって。
ただそれを認めたくなかっただけであって。
認めてしまったら俺の中の何かが変わってしまいそうで怖い。
「…仁人、何であんなやつ連れてきたんだよ」
彼奴が初めてここに来た日に仁人に掴み掛かる勢いで猛反対した蒼麻が、今は苦しそうに悲しそうに呟く。
「…それ、俺も聞きてえ」
そんな蒼麻の声に加勢する声が聞こえてきた。
入れ違いの様に入ってきて仁人の斜め前に腰掛けている寛人の隣に座った辰の声だった。
理由は詳しくはわからないけど辰も蒼麻と一緒で反対派。
再び訪れた静寂の中、未だ目を閉じてその場に佇んでいる仁人に全員の視線が集まっている。
そっと仁人の口が開くのを待つ。
「俺に楯突く女も興味を示さない女も彼奴が初めてだ」
静かな空間に仁人の低くて力強い声が響く。
開けられた瞳は魅入ってしまうほど綺麗な黒い瞳。
あの瞳に一度でも囚われたらもう、逃げ出す事なんて出来ない。
「…貴方じゃなくて”貴方達”だから、だ」
そう呟く仁人は吃驚するほど愉しそう。
まず、あの冷酷王子が女に興味を示す事自体が俺らにとったら驚愕の事実だ。
スッと立ち上がった仁人はきっとあの子を送りに行くんだろう。
「俺が行ってくる」
けど、それをさせなかったのは思いもよらない人だった。
