《悠麻 side》







これから先、明るい未来に向かって歩くことはない。

ずっと一生暗いどん底の道を歩むしかない。





そうやって、ずっと思ってた。




一度、なんかじゃない。
何度も何度も諦めかけたこの人生。










まさか、世の中のはみ出し者の自分に笑って過ごせる日が来るなんて思ってなかった。






そんな日々を俺が送ることが出来るのも……






「おはよう、仁人」


「…ああ」



今まで俺以外誰もいなかった空き教室に入ってきた仁人。




…彼のおかげだ。






俺の尊敬してやまない人。

何も持っていなかった俺と蒼麻に沢山の物をくれた。



”この人に一生ついていきたい”


そう思う下の奴等の気持ちが手に取るようにわかるのは俺と蒼麻だけかもしれない。




上に立つ者としてのカリスマ性と貫禄だけじゃなくて強くて広い心と身にしみるほどの優しさと、そして命を懸けてでも獅子を守ると語っているそのデカイ背中と愛情を持っている。







弱みを見せずに俺らを守るように頂点に立つ仁人は俺が出会ってきた中で1番男らしくてカッコよくて惚れ惚れするほど全てにおいて完璧な男だ。



180越えの長身の体格に鍛え上げられた肉体美。



それに加え、……目線を上げれば視界に飛び込んでくる男の俺から見ても惚れてしまいそうな程の整った顔。



こんな完璧な人を目の前に女たちがほっとかないのもわかるはず。






けど、俺は知っている。




この世に[完璧]なんてものは存在しないことを。





俺だからわかるのかもしれない。


人間が[完璧]の枠組みに入ることは一生ない、という事を。