「送るよ」
ちょうど倉庫から出たところで後から私を追いかけてきたのであろう彼奴らの中の1人が私の隣並ぶ。
横に視線を流し見上げればそこには予想外の人物がいて思わず目を見開く。
そんな私を見逃さなかった彼は「俺じゃ嫌だった?」だなんてクスクスと笑っている。
その顔はまさに
「別に」
私がそう言うことを把握済みというような顔で何となくやりにくい。
そんな私にお構いなく、彼は私の腕を掴んで駐輪場へと連れて行く。
「はい、これ付けて」
彼の所有物であるバイクまで辿り着くとヘルメットを手渡された。
黒塗りの車同様真っ黒なバイクに心惹かれるのは私の中がこれ以上の黒に染まっているからなのか。
それとも、彼に黒が似合わないからなのか。
どちらにせよ目の前にあるちょうど私の腰の高さが座席になっているほどデカイ彼の黒いバイクに心奪われていたのには変わりない。
「もしかして乗れない?」
ボーッとバイクを眺めていれば、バイクの乗り方がわからないから乗る事が出来ないと解釈されてしまったみたいで困ったように笑われてしまった。
「…っ」
否定しようとしたけどそれよりも自分の身体が宙に浮く感覚を体感する方が早かった。
自ら勝手に宙に浮くなんて怪奇現象何がじゃなくて目の前の奴に抱きかかえられた事によって私の足が地から離れただけ。
まさか、”乗れない私”を抱きかかえる方法で乗せられるのは思っていなかった。
何だか恥ずかしくて下ろしてって言おうかと思ったけどやはりそれを口にする前にバイクの上に下された。
「軽すぎ…ちゃんと食ってんの?」
バイクに跨りながらそう聞いてくる彼は心配してくれているのか、私をバイクの上に置いた時に少しだけ見えた顔が微かに歪んでいる気がした。
「貴方達ほどではないけど心配されるほどでもない」
目の前にある、当たり前だけど私より大きい背中に向かって呟いたけど聞こえているのかはわからない。
「……もう少し太ってくれなきゃこっちが心配になる」
出発する寸前、彼が何か言った気がしたけど走り出したバイクの音に見事に掻き消されてしまい全く聞こえない。
「なんか言った?」
聞いてみたけど
「落ちるなよって言っただけだ」
案外普通な答えが返ってきた。
