紅〜kurenai〜




















「コイツがさっき言ってた奴だ」





私の中では数十分のように長く感じた時間でも周りから見れば彼と目が合っていた時間は数十秒にも満たないほどで。



とりあえず、悠麻が床に放り出した荷物を彼と寛人が手際よく片していき、ど真ん中にあるテーブルを囲むように配置されていれソファーに全員が座ったところで仁人が静かに口を開いた。







何となくはわかっていた、というより会わせたい奴なんて彼以外の人には会っているだから彼しかいない事なんて当たり前のように判断できる。







「えっと…川崎アイです。これから深い付き合いになるのかな?まあよろしくね」



「深い付き合いになんて一生なんねえよ」と相変わらず敵意剥き出しの蒼麻の隣、私の真正面に座っている彼…アイが紳士そうな笑顔を見せている。



その笑顔が社交辞令の笑顔だってことくらいは私にだってわかる。



誰だかわからない仁人が拾ってきたと言っても過言ではないこんな地味な見た目の女に心打ち解けた笑顔を見せるほどここは…この世界は甘くない。



ましてや”霜村サクラ”なんて女にね。




これから先その笑顔を向けられるのは少々堪えるかもしれないがそれでいいんだ。




そんなことを考えながらアイの自己紹介に対し頷いただけの私を戸惑った顔で見つめてくるけど私も正直今の状況どうしたらいいかわからない。




再び何とも言えぬ空気が私たちを包んだ時、何かを感じ取ったらしくため息を漏らす寛人に視線が集まる。



寛人本人の目線は仁人へと向いていて。





「あ?」





呆れた表情で見られた仁人は何だよとでも言いたげな顔。




「仁人、アイに条件のこと言ってないでしょ」


「……」


問いかけではなく断定されて言われた言葉に仁人の無言は肯定の意を示しているのは一目瞭然。




2度目の寛人のため息が出そうになったところでアイが身を乗り出し口を挟んだ。




「条件、って何?」




あの日あの場にいなかった上に仁人から説明を受けてないとしたらこの会話の内容は到底理解できないだろう。