上司の笑顔を見る方法。

 

*おまけ*



……私の疑問の答えはきっと、今目の前でふわりと浮かんだ藤谷さんの笑顔の中にある。




「……ひゃっ?」


藤谷さんの笑顔に見とれていると、藤谷さんの手が私の腕を突然ぐいっと引き、私はバランスを崩してしまう。

私の体はすとんと藤谷さんのお膝の上へ着地し、藤谷さんの腕がしっかりと私を支えてくれた。

つまり、座った状態で、お姫様だっこだ。


「あああの、藤谷さん」

「櫻井が流されやすくて助かったよ」

「……はい?」

「好きでもない男と事故でキスしたとしても、普通はそこで終わるものだろ。ほんのちょっと、かまかけただけでキスしてくるから、おもしろくて仕方なかった。告白までしてくれるし、笑いが止まらない」

「!!」


くつくつと笑う藤谷さんを私は呆然と見るしかなかった。

まさか、おもしろがられていたなんて……!

はっと気付く。


「も、もしかして、私に見せてくれてた天使のような微笑みは、ただ可笑しくて笑ってただけなんですか!?」

「天使とはすごい言われようだな。初めて言われたよ」


藤谷さんは少し驚いたように目を丸くした後、再びくすくすと可笑しそうに笑う。

……ん? っていうか、もしかして……私のキスを拒まないのは私を好きとかじゃなくて、おもしろいから……?

藤谷さんの笑顔の中に私の告白の答えがあったわけじゃなかったんだと気付き、気まずさが襲いかかってきた。

笑顔が見れて浮かれてたけど……どうしよう……っ。


「ま、天使の微笑みかどうかはこれから知っていけばいいんじゃないか?」

「え? ん……っ」


まるで獲物を捕らえるように誰もを魅惑する“悪魔”の微笑みを見せた藤谷さんの唇が、私に触れてくる。

……ううん、触れるなんてかわいいものじゃない。

私の思考を全てのみ込んでいくほど、やわらかくてあたたかい、とろけてしまいそうな濃厚なキス。

いつも見つめるだけだった骨ばった藤谷さんの手が私の体をゆるりと這っていくごとに、私の体の熱がどんどん上がっていく。


「ん、ぅ……」

「……俺に言わせれば、櫻井は甘い毒を唇に落としていく小悪魔にしか見えなかったけどな」

「……え?」

「やられっぱなしは悔しいし、覚悟しておけよ」

「っ、」


そんなセリフを吐いた藤谷さんの笑顔はやっぱり天使のそれとはほど遠く……私の思考も心も体温も、何もかもを奪っていったのだった。




……甘過ぎるキスの最中、切ない表情をした藤谷さんの口から熱い吐息とともに溢れたのは、「ずっと、櫻井のことが好きだった」という言葉だった。


おわり。