「悪かったな、」



保健室に入った所でようやく小鳥遊が喋った。


正直なんて答えればいいか分からなかった、


だって、小鳥遊が悪くないのは自分でもわかっていたから。


悪いのは無愛想なあたしなんだって。

そんなのずっと前から分かってた、


「そこすわって」


そう言って小鳥遊が指さしたのは保健室に置いてあるソファだった



「え、え?あたしは全然大丈夫だよ?」


動揺を隠せずに言うと颯斗が少し睨むようにして私をみてきた。


「どこが?」


急に小鳥遊声のトーンが低くなる。


怖い目をした小鳥遊が少しずつ千夏に歩み寄ってくる。


すると、

「や、やめてっ!」


急に千夏の事を壁に追いやり右手首掴み上へと上げた。



制服の袖がスゥーっと落ちて腫れ上がった腕が丸見えに....



「なにこれ?」


...。



千夏は恥ずかしさと動揺で下を向いて目を閉じてしまう。



「聞いてる?この腕どうしたの?」


「小鳥遊には関係ないよ...。手、離して、」



「ふざけんな!!関係なくねーよ。心配するくらいいいだろ?誰にやられた?」


小鳥遊の手首を握る力が強くなる。


怖い、父のことがばれるのも、小鳥遊の怒った表情も。


「なんで小鳥遊が心配なんてするのさ!あんたになんかした?ねぇ、どうしていつも私に構うのぉ、」


ついに泣き出してしまった千夏、


いつもことある事に私に話しかけてくる小鳥遊、最初は何が目的なのかと疑っていたし、正直鬱陶しかった。


でも、今は違う。


もっと話しかけて欲しいし、小鳥遊の笑顔をまじかで見ていたい。


いつの間にか私は、この変人に行為をいだいてしまっていたのだ。





千夏の泣き顔を見て我に返ったのか、そっと小鳥遊が手を離した。



「わりぃ、言いすぎた」


千夏は離された手で顔お隠す。


「なぁ、こんなタイミングで言いたくねーけどー聞いて欲しい事がある。」


急に真面目な話を始めた小鳥遊に千夏は目を合わせた。



「中学上がって初めてお前を見た時、立花は俺に見向きもしないで横を通り過ぎってたんだ、俺だけじゃねぇ、立花が自分に行為があるだろう男に毎回冷たい態度を取って突き放してて、それで、気持ち悪ぃかもしんねーけど、俺、気がつくといつも、立花のこと目で追ってて、お前は覚えてねーかもしんねーけど、俺がハンカチ落とした時、お前俺の机に手紙付きで置いといただろ?その手紙もらった時なんかよくわからない気持ちになって....」


そこまで言ったところで、小鳥遊は話を中途半端にとめ、「やっぱ何でもねー。」と言ったのだった。


真剣に話してる小鳥遊の顔は、何処か熱のあるような顔をしていた。



「まあ、結論で言うと、俺はお前の事が心配だから、その傷が誰にやられたかが気になんだよ。だから、今じゃなくてもいいから、話す気になったら、教えてくれ...」



そう言うと小鳥遊は冷蔵庫から保冷剤を取り出して私の腕に当ててくれた。




心の底で、小鳥遊なら助けてくれるかもしれない、なんていう考えが浮かんでしまった私は、きっとこの時、初めて男の人に心を開いたんだと思った。