『ザァーーザァーーー』




「大丈夫、じゃねーよなっ、」


そう言いながら小鳥遊は自分の着ていたパーカーを私にかけてくれた。



「あのっ、ありがとう、でも、どうして来てくれたの?」



そう質問すると、少し困った顔をした小鳥遊は、頭をかきながら理由を説明し出した。




「いや、待っても待っても立花から電話かかってこねーから、清水に確認してもらったら、何回かけても立花が出ないって言われて、その時、腕の怪我はクラスの誰かにやられたんじゃねーかって思ってたんだけど、もしかしたらって思ってきたら、外に響くくらい変な音めっちゃしてて、悪ぃ、リビングの窓ガラス割って入って来ちまった...」


なんていうか、こいつ凄い、なんて思いながら、千夏は何も言わずに小鳥遊の事を見つめ続けた


すると、あっとなった後、小鳥遊は訂正するように言い直した。


「家の場所は清水からきいた!だから、別にストーキングしたわけじゃねーからな?」


焦るように説明をしてきた小鳥遊は、千夏の納得したような顔を見てホットしていた。その後に携帯から110をして父は警察まで届けられた。


千夏と小鳥遊は後日、事情聴取を付けることになった。


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「家コーヒーしかないけど、飲む?」



警察が帰っていった後、小鳥遊はまだ千夏の家にいた。



コーヒーが出来上がると千夏は小鳥遊の前に静かに置き、向いの椅子に座った。



「いつから」



「え?ああ、いつからだっけ、お母さんが死んだ時辺りだから、小学四年生の頃からかなっ」


そう話すと、小鳥遊は驚いた表情を見せた。


「おまえっ、そんな前から、誰かに相談しなかったのかよ?」



「実の親だからね、言うに言えなくてっ」


等々、父が捕まってしまった。


でも、何年も続いてきた苦しみから、やっと開放されたのだ...


「わるい、実の親だったのに、余計なことしたかも。」



私が少し悲しんでいると、それに築いた小鳥遊は、謝った。


「うんん、大丈夫。これで痛い思いもしなくて済むし...お父さんとも、合わなくて済むんだ、何もかも全部、終わったんだ、うう、」


心配かけないように答え様としたのに、心の中の何かが2つ、スゥーーーっと消えていった気がして、それが悲しくて、自然と涙が流れてきた。



すると、急に小鳥遊が私に覆いかぶさっる様に抱きしめてきた。


「だったら、俺がお前を守ってやる、これから先ずっと、だから...」


そこまで言ってから小鳥遊はギュッと抱きしめていた腕を外すと千夏の顔を見て、


「付き合ってくれ、ぜってー後悔なんてさせねぇ。」



その言葉をきいた千夏の目からは、沢山の感情を込めた涙が溢れてきた。


「私ね、覚えてるよっ、ハンカチ、本当は直接渡したかったけど、話したことなかったし男の人苦手だったから手紙だけでもって思ってっ、嬉しい...。本当に嬉しいっ」


あの時の颯斗笑顔、今でも覚えてる。


あれから私が泣き止むまでずっと、私を抱きしめてくれたんだったな、



これが、私と颯斗との初めての思い出。



とても苦くて甘い記憶。