桃色パレット

「あ、邪魔、ですよね、ごめんなさい。帰ります」
「や、邪魔じゃないけどさ、……ずっとここにいていいのかなって思っただけ。んじゃあね、」






顔はまたキャンパスに戻ったまま。

あたしの顔を見ないまま、軽く手を降られた。






「失礼しました……」





あたしはガラガラと扉を開けて、美術室を後にする。



何故か少しドキドキ、心臓の鼓動が聞こえてくる。

それに、顔が少し火照ってる。





王子様。

美術室の王子様に会っちゃった。



あたしの心はウキウキした気持ちと、ドキドキが混ざって、ものすごく変な感じ。


今まで、感じたことのない感覚。






この感情がなんなのか全くわからなかった。


けど、そんなこと考えようともしなかった。





だから、そのウキウキドキドキな気持ちのまま、少しスキップ気味に食堂に向かう。


けど、あたしの手には筆箱。




引き返して、自分の教室に戻る。











教室は当たり前のように静かで、電気も消えているから暗い。

まだ4時すぎだからいいけど、夜中とかだったら本当に怖いんだろうな。って思った。



自分の鞄を取って、その中に筆箱を突っ込む。


それからひとつ、ため息を小さくついて教室を出ていく。






「さあて、食堂に向かいますか」




誰もいないのにボソッと呟いて、足音だけが響く廊下を歩いていく。