「ん、なに言ってるんだ?」 いままで 想像の世界に入っていたから聞こえていなかった柿原くんの声がして 腕をグイッと引っ張られる。 (つ、連れて行かれる……! こういう時はたぶん、どっかの倉庫とか……お母さん!!!) 「悪かった……大丈夫か?」 とっさに片手で頭を隠していた私は「ヘァ……?」と間抜けな声を出していた。 彼は、そんな私を見て少し目を丸くした後 表情を少し柔らかくした。