死。
 それは、必ず訪れるモノ…人という存在の、いつかは目の前に死がやってきて、暗闇に突き落とす。それが彼ら。でも、死とはそんなものではなかった。私に、笑いかけてくれるものだった。

「こっち、おいで。明るい光がまってる。」

そう言って笑いかけてくれるものだったのだ。私の今までが消えて、死という光のステージが広がる。これはつまり、私の人生は死。死こそが生き甲斐、生きる意味なのだ。死のために生き、生きたくないから死ぬ。
「…お前なぁ、考えすぎ。もっと気楽に決めようぜ。」
そう言って、死は私の頭を撫でた。大きくて、柔らかい、ごつごつした手だった。
「私、あなたになりたい。」
「それは無理だ。」
「どうして?」
「寿命が来てない。」
寿命。どうやらそいつのせいで私は死ねないらしい。

「そんなもの、殺せば良いじゃない」

「でもだめ。」
「えー…ケチ」
「俺は、お前に与えなきゃなんねえもんがある。それは、お前が俺になったらできなくなる。」
「私は、あなたの都合のためだけに決められてるの?」


…なによ、けち。いっつも笑って、その素敵さを教えてくれたのに……私は、あなたになりたいだけなのに、それすらも許してもらえないの?許さナ、イ。アナ…タ、ヲ。ユルサナイ。
「ワタシハタダ、アナタニナリタイダケ。」
「お、おい…どうした?」
「ユルサナイ…ホラ、ワタシノ血ガ、ヨロコンデルワ」

そうして私の感覚、すなわち自我が戻ったとき、私の側からあいつは消えていた。でも、心の中に、あいつは居た。
「コレデ、ズットイッショダヨ?モウテバナサナイカラネ。テバナシタラ…」



私の鼓動を食い千切ってあげる。