病室に入るとたくさんの先生と看護師に囲まれた、葵杏がいた。
ただ、それらはひとつも手を動かしていなかった。
かきわけて、葵杏の隣に座り込む。

「葵、杏?」

動かなかった葵杏の手が少し震えた。

「大好き…忘れないでね」

涙を流しながら言った彼女からはもう精気を感じなかった。
死に顔は眠る様に綺麗なんてよく言うけれど、彼女の顔には頑張った証が残っていた。

「俺も...」

最期に呟いた言葉は聞こえてましたか?