あれから毎日病室に通った。
そして、約束通り海に来た。
「わぁ、きれい」
そういう彼女のほうが何十万倍も綺麗だった。
夕暮れ時に来た海は、オレンジに染まった太陽にオレンジに染められていた。
「この景色、太陽みたい」
「太陽くんは優しいね。もう1度柊ちゃんと結びつけてくれたキューピットみたいで、ずっと柊ちゃんを明るく照らしてくれる太陽だね」
「あいつなしじゃ生きられないかもな」
そう言うと、優しく彼女の唇にふれた。
「葵杏、大好き」
「ありがとう」
その時、彼女が「私も」と返してくれなかったのはこの先がもう短いとわかっていたからかも知れない。

