カタ…
少しだけ音をたてて扉が開く。光がよく入る部屋なんだろう、俺には少し眩しすぎた。

「お母さん?」

澄んだ声でそう聞いた目は0.1秒後には大きくなっていた。キョトンとした顔で

「柊ちゃん??」

と聞いてくる。

「柊ちゃんだよ」

と柔らかく返す。彼女を見た瞬間に、高鳴っていた胸は不思議と落ち着いていた。

「なんでここにいるの?」

「太陽から手紙受け取った。なんで、あんなことしたの?」

「何も知らずに終わってしまうのが嫌だったから」

「違う、本当は忘れて欲しくなかったんでしょ?俺に」

「な、んで?来て欲しくなかったのに...」

彼女の目から涙が溢れた時、愛おしくなった。
ぎゅっと優しく抱きしめる。

「ごめんね、気づいて挙げられなくて。苦しかったな。これからは俺がいる。もう永くはないって葵杏は言うけど、永くなくても思い出はできるよ。俺が忘れられないほどの思い出を作ろう」

「優しくなんかしないでよ...」

「葵杏のためじゃない、俺のため。俺がお前を忘れたくないだけ。」

「ばかぁ…」

「ほんと、こんなに苦しませてる俺は大バカだよ。今度、海行こう。きっと綺麗だから。」

「秋だから寒いよ」

「そしたら、俺が温める」

「柊ちゃん、くさいよ」

「わかってる、けどくさくてもいい。そんなこと言わせてるのお前だろ」

「うん」