神様のいない街


目をぎゅっとつぶってゴメンという合図を送ると、わたしは席に着いてホッとした。

誰にも文句を言われなかったこと、本当によかった。

今日の不幸もこれでおしまい。
1日に2回も不幸が訪れたことはなかったからね、問題ありません。

「…今日はここまで」

「起立、礼」

HR委員が号令をかけて、2時間目は終了。
よかった、3時間目からはまともに受けられる。

んだけど。

「…このクラスに、ピアノ弾ける人いる…?」

…待て待て待て。
昨日の男子生徒ではないですかっ!?
どこか抜けてるし、間違いない、昨日の男子生徒ですよ!

隠れなきゃ隠れなきゃコソコソと何処かに隠れようかと思った瞬間、耳を貫く悲鳴とも取れる歓声が響き渡った。

「あたし弾けるよっ」
「マリもマリもっ」
「ウチもウチも〜」

…人気者だったのか、あの男子生徒。
隠れなくて済んだけど、休み時間はキャーキャーうるさかった。