神様のいない街


それを見ているうちに、わたしは何故か弾いていた。

この音楽室だけが、社会から取り残されているような気がして、わたしと同じだと…ただそう思ったのだ。

それ程長い曲じゃないだけあって、直ぐに弾き終わってしまった。

「…帰ろうかな」

そろそろ日も暮れて夜だ。
遠くにオレンジ色の光が微かに見えるだけの、闇の世界が広がっていた。

運動部の声もいつの間にか聞こえなくなっていて、わたしも帰ろうと思った。