「お前…いい加減にしろよ」

とても冷たくて鋭い低い声に、あたしはビクッとする。

でも、里夏さんは動じなかった。



「なんのこと?」


「とぼけんじゃねぇーよ。こいつにはなにもしないっつったろ?」


なにもしない。そう言われた瞬間、何故か寒気が走った。

それで脅してたの…?



「何もしてないわよ?ただ教えたあげただけよ〜、凌が言ってたことを」


くすっと笑う彼女が、恐いと思った。



「大分脚色して、な」

「あたしはそれで昔振られたのに…その娘はもういいわけ?」


彼女が真剣さを含んだ顔つきになる。



昔振られた…
昔付き合っていた時のことだろうか?

想像だけで、よくはわからない。



「あぁ、もういい」


だけど、彼女は誰なのかは知らないようだ。