梓くんは家まで送ってくれた。
本当に感謝しきれない位だ…。
ありがとうっていうと、笑顔を返してくれた。
何も言われなかったことが、逆にありがたかった。
玄関を開けると雛がいた。
「しおちゃん!お帰りな…目、どうしたの!?」
あたしを心配してくれる雛が胸の奥にぐっときて……ガバッて抱き着いた。
助けを求めるみたいに…。
「雛ぁあ〜!…もう、無理…!!…辛いよ…っ…」
梓くんの前ではさすがに吐けなかった弱音を口にした。
それから…ぎゅうーっとしたまま数秒数分間、雛に抱き着いていた。
雛はそのあと何も聞かず、あたしに濡れタオルを持ってきてくれた。
「…待ってた」
夕飯が終わって2階に上がって自分の部屋へ行こうとしたら、壁にもたれ掛かる凌兄がいた。
さっき夕飯に居なくて、ホッとしていたのに……。
そのまま通りすぎようと思ったのに、体が勝手に立ち止まってしまった。

