「言え!」
「言いたくないって言ってるじゃん!!」
「…なんで泣いてんだよ!?」
凌兄の手があたしの頬に伸びて来た時。
「触らないで!!!」
自分でもびっくりするぐらい、叫び声に近い声が自分の喉から発せられた。
――目の前には、凌兄のびっくりした顔があった。
それがゆっくりと、切なげな顔になった。
それを見たら、あたしも少しだけ胸がぎゅって切なくなった。
だけどあたしの視界に、凌兄の数歩後ろにいる里夏さんが入った時、唇をきゅっと噛み締めた。
「梓くん行こう…」
向き直り、今度はあたしが少し強引に梓くんの腕を掴んで引っ張り、前へと歩いてく。
「…待ってるからなっ!」
後ろから…はっきりと聞こえて来た。
でも…ちゃんと聞こえていたけど、無視して……引っ張る腕の力を更に強くしてどんどん前を歩いた。

