少しだけ、凌兄が周りを伺う仕草をした。
そう思ったら……
……彼女に、キスした。
心臓に突き刺さる感覚がした。
ぎゅーっと、何かを握った。
強く、強く、ぎゅーっと。
涙が垂れてくのが…自分で分かった。
頬を、生暖かいものが伝う。
…メールで言ってたのに……。
ねぇ、付き合ってないって。そう言ったじゃん……。
「…ちょっと痛いかな」
その声にビクッとして、我に帰った。
「服なら全然いいんだけど…腕だとちょっと痛い」
顔をあげたら、梓くんの困った顔があった。
「あっ…ごめんね!!」
いつのまにか、あたしは梓くんの腕の服を掴んでいたみたいだ。
それでさっきからぎゅーって、やってしまっていたみたい。
「…ごめんなさい」
「そんなに謝らなくても大丈夫よ」
落ち込むあたしに、優しい笑顔と言葉をかけてくれた。
それでまた、涙が込み上げる。

