返事が返されないのが恐い。
「…あぁ」
そう思って顔を上げた時、返事が帰って来た。
しっかりと目が合って。…それから、視線が逸れて横を通りすぎていった。
凌兄がどんな表情をしていたか、言葉で表すのは難しい。
だけど、冷たかった。
“お前に言われる筋合いはない”…そんな瞳に見えた。
…なにやってるんだろう、あたし。
なにしたいの? あたし…
行った方がいいよなんて思ってないくせに、お節介して…
うざがられたじゃん。
もしかしたら、嫌われたかも。
ほんとっ、馬鹿みたい―。
あたしは立ち上がって、鞄をちゃんと持ち直す。
階段を上がって、とぼとぼ自分の部屋へと歩いていく。
「おいっ!」
ゆっくりと顔を声のした方へ向ける。勇紀は、なんだか渋い顔をしていた。

