「そんなとこで何やってんだよ…」
凌兄は近づいてきて、あたしの前に立ち止まると背を屈めて、覗き込んできた。
「どーした?」
優しく聞いてくる。反則だ。
真っ直ぐあたしの目を見てくる凌兄に、気まずくて逸らした。
「…ちょっとしゃがんでるだけ。なんにもないよ」
可愛くないのは今さら。
だけど今は泣きたくなった。
「こんなとこでしゃがみ込んでなんにもないわけないだろーが。どーしたんだよ?」
近づかないで。
あたしに触れないで。
胸が詰まって苦しいよ―…。
「…凌兄、こないだの遊園地で会った女の人来てるよ。待ってるだろうから早く行った方がいいよっ――!」
顔をあげてなんて、とても出来なかった。
ただ詰まらないよう、一気に喋れた。…よかった。

