何も言うことが出来ないまま、伏し目がちに俯いていた。
顔をあげることも恐い。
なによりこの沈黙が恐い。


けど、そんなあたしの態度がいけなかった。
凌兄はそれを“同意”と受け取ったらしく、入口のある方へと歩いていく。


あたしは戸惑いながらもついてくだけ。


今日、初めて知ったんだ。
いつも前を歩いていても、「おせぇーよ」とかなんだかんだ理由を付けて、後ろを振り返ってあたしを気にしてくれて、あたしの歩調に合わせてくれていた。

でも、今は振り返ることはない。前を長い足が普通に歩いていくから距離がどんどん離れていくのを、
あたしは小走りをしながら必死に追い付いてった。


悲しいとか、勝手かな?
ひとりぼっちにされたみたいで、不安だよ。
寂しくて、恐いよ。











ねえ、もうひとりはやだよ…

ひとりにしないで?

手を…手を、
その手を離さないでいて―