目があちらこちらに方向転換する。
後ろに下がろうか…?
いや、ここで下がったら不審だ。
前に進むしか、ない――。
足を前に出して一歩進もうとするが、なかなか上手くいかない。
「朝飯なら、冷蔵庫の中入ってる。雛が出掛ける前に作ってった」
その言葉に、少しだけ緊張が和らいだ。
「あ…うんっ」
さっきとは違って、足はスムーズに動き始めた。
「…凌兄だけ?雛とか冬兎は?」
沈黙に耐えられなくて、自分から話し掛けた。
勇紀はたいてい部活で、いつもいない。
「そ。冬兎は剣道部に借り出された、今大会近いらしー。それと雛も出掛けてった」
冬兎は運動神経は勇紀には劣るが、結構いいので部員ギリギリの剣道部に大会近くになるとよく借り出される。

