足音で凌兄があたしの真横くらいに来た時、靴の音が止まった。 反射的にビクッとした。 だけど。 凌兄は普通に歩き出した。 その時には、靴の音に混じって車のキーの揺れる金属音が一緒に聞こえるようになって。 「行くぞ」 そう一言、発した。 あたしは返事も返せずに、つぶっていた目を開けて、落ちそうな涙だけ手で拭き取って、 車の方へと小走りで歩いた。 バタンッ 車のドアの音が、いつもより耳に鈍い音で届いた気がして。 代わりにあたしは静かに閉めた。音がなるべくたたないように。