「……お前は馬鹿すぎんだよ…」
静まり返っていた車内に、凌兄の声がはっきりと響いた。
ズキッ―
呆れているその声は今まで聞いたどんな言葉よりも、冷たかった。
へんなの…
もっとブスとかヒドイこと言われたことあるのに…
馬鹿なんて言われ慣れてるのに…
車は赤信号で停止した。
辺りは見慣れない景色が広がっている。
あたしは必死に、興味もない外の景色を見て紛らわしていた。
でも凌兄が喋り出すのが、
沈黙が出来るのが怖くて、
思い出したようにあたしは言った。
「凌兄さっ…っやっぱり、勇紀ところ戻ろうよ…っ!」

